夜のしめやかな願い
「二度と俺の前に現れるな」
首を握りしめたまま、宗臣はさゆりを引きずり廊下に放りだした。
尻もちをついてせき込んでいると、ハンドバッグが隣に叩きつけられる。
ドアが閉まる音と、鍵がかかる音。
せき込みながらも、さゆりは聞いていた。
しばらくして落ち着くと、涙と鼻水とヨダレをハンカチで拭った。
ハンドバッグを胸に抱えて、立ち上がると、よろめく足で階段を降り始める。
とりあえず、今は考えない。
後だ、後。
そうしないと、とてつもない深淵に引きずまれて、そして抜け出せなくなるから。