夜のしめやかな願い
バイトが終わると、さゆりは足音を忍ばせて、雑居ビルの階段を上がっていた。
ドアにはまっている擦りガラスから明かりは漏れている。
そっと身をかがめて隙間を確認すると、カギはかかっていなかった。
ドアノブを掴むと、一気に開く。
宗臣が驚いて顔を上げるのを確認すると同時に、手前のソファーに向かって手に持っていたビニール袋を放り投げた。
そのまま勢いでドアを閉める。
そして無言のままダッシュで建物から立ち去る。
バカヤローと言いながら走り去ってみたかったが、他人の目が怖くて、そこは我慢した。