夜のしめやかな願い
ビルの前で息を整え、足音をひそませて廊下を歩く。
いつものように勢いよくドアを開けた、と思ったら更にドアがぐっと開かれ中へとよろめいた。
ドアノブを手にしたままだったので、危うく転倒はまぬがれる。
革靴が見えるのに、顔を上げると、ドアを掴んだ宗臣が立っていた。
「おまえ、な」
さゆりはへらっと笑った。
「梅干しが嫌いだって知っていて、毎日毎日、梅干しのおにぎりを投げ入れているだろう」
あら、ばれたか。
さゆりの表情に宗臣は眉をしかめてから、さゆりが手に持っていたビニールバッグを取った。
「コーヒーを入れる。
座ってろ」