夜のしめやかな願い

部屋の隅にあるポットでインスタントコーヒーを入れている背中を見つめる。

やつれたかと思っていたが、そうでもない。

記憶にある通りの力強さを感じる背中。

「悪かった」

マグカップを渡されて、ぽつりと言われた。

見上げると宗臣と目が合い、ふいっとそらされた。

「八つ当たりをした」

さゆりにとって、自分は金銭援助をしているだけの存在価値で。

それを、彼女にとって大した価値では無いと告げられて。

「八つ当たりで済まされない事だが」

「うん、なんとなく、わかってた。
ええと、たーくんから聞いた。
 海外の方が嫌がらせを受けないのにって。
 なんとなく、おじさん、まだ当分嫌がらせを楽しみそうだし。
 どうなのかな?
 もうちょっと海外にてから戻った方が、おじさんもめんどくさくなってしなさそうだけど」

ああ、やはり、さゆりはわかっていない。

彼女はいつだって理解できない。

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