夜のしめやかな願い
「梅干し以外にしろ」
その言葉に胸に灯がともる。
「うん、じゃあ、高菜ね」
宗臣の口元が緩むのを見逃さなかった。
本人は言わないが、意外と緑茶に合うものが好きなのを知っている。
お稲荷さんとか。
さゆりは古ぼけたビルを出て、いつものように深呼吸をした。
いつものように、ダッシュで逃げた後の、安どの深呼吸ではない。
宗臣との関係の新しいドアが開いたのを感じて。
「よっしゃ」
さゆりは小さく呟くと、歩き出した。