夜のしめやかな願い

「梅干し以外にしろ」

その言葉に胸に灯がともる。

「うん、じゃあ、高菜ね」

宗臣の口元が緩むのを見逃さなかった。

本人は言わないが、意外と緑茶に合うものが好きなのを知っている。

お稲荷さんとか。

さゆりは古ぼけたビルを出て、いつものように深呼吸をした。

いつものように、ダッシュで逃げた後の、安どの深呼吸ではない。

宗臣との関係の新しいドアが開いたのを感じて。

「よっしゃ」

さゆりは小さく呟くと、歩き出した。

< 158 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop