ぼくらは最期まで最初の恋をする


時間が経つのはあっという間で、今日はまさに大会初日。もしこれで負けたら引退という試合だ。

あれから、頭痛は日に日に酷くなって言ってるような気がする。でもそれも、野球をやっていれば気にならなかった。


「悠斗!おはよう、今日は頑張ってね?」


家を出ると待ち構えていたのは咲だった。


「おう、みてろよな。完璧に三振とってやるから」


「期待しないで待っとくね」


ひねくれ者の咲は、そういって俺に笑いかけた。
大好きな人に応援されてしまったんだ、絶対負ける訳には行かない。


「でね、悠斗、これ…」


咲は、後ろに隠していた手を広げ、俺に見せた。


「これって…」


思わず驚いて咲をみつめると、


「絶対、優勝してね?悠斗が野球やってるの、まだまだ見てたいから…」


そういってうつむくと、かわいい刺繍が施されたお守りを俺に渡してきた。


「咲…絶対、県大会まで勝ち進んで、ここでもっと野球続けるからな」


「うん…!」


思わずプレゼントを貰って、ニヤけそうになる顔を必死で抑えた。


「じゃあ、行ってくるな!」


「うん、行ってらっしゃい!がんばれ!」


いつもと同じ、とびきりの笑顔で送り出してくれる咲に、絶対に優勝して、好きだと伝えようと思った。
そして、ふりかえり


「優勝したら、咲に言わなきゃなんないことがある。絶対優勝して帰ってくるから、そしたら話、聞いてくれるか?」


「…!?うん、わかった」


珍しく、真剣な顔でいった言葉は、間違いなく咲に伝わったらしくて。そんな驚いた顔にも癒されながら、本当に出発した。


最後の大会へ向けて…
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