ぼくらは最期まで最初の恋をする
悠斗side
「バッチこーい!」
俺の後ろから声が響いた。そう、今日は大会前ラストの練習試合。
場面はツーアウト。ここで抑えれば俺達のコールド勝ちだ。
(ストレート来い)
キャッチャーの瑛太の指示を見て投球体制を整える。が、その瞬間、再び頭に激痛が走った。だが、1度投球体制をとって…しまったら、もうやめる訳にはいかない。そして
「ストライク!バッターアウト!」
なんとか三振をとり、俺達は試合に勝った。
うちの野球部は驕りでもなんでもなく強い。だから、こうした練習試合も、結構人が集まって見に来てくれる。
そして必ず、咲は来てくれるんだ。試合の度に、ねーちゃんが作った弁当を持って見に来てくれる。
「悠斗!おめでとう!はい、お弁当」
「いつもサンキュ!」
「はいはい」
にっこり笑う咲の顔を見ていたら、別に頭の痛みなんてどこかへ飛んでいってしまった。
「じゃ、あたしは帰るから」
「おう、またな」
咲を見送り、弁当を片手に瑛太のところへ走った。
「今日もナイスキャッチだぜ、瑛太」
瑛太に後ろからそう告げると
「おう、でもお前、ラストの球おかしかったんじゃないか?」
瑛太は振り返り俺をどこか奇妙そうな顔で見た。
「いつものスピードののったストレートじゃなかった。どうしたんだ、悠斗らしくもない」
瑛太とはずっとバッテリーでやってきた。今更ごまかせないということらしい。
俺は、一瞬ためらってから口を開いた。