ぼくらは最期まで最初の恋をする



悠斗side


「バッチこーい!」


俺の後ろから声が響いた。そう、今日は大会前ラストの練習試合。

場面はツーアウト。ここで抑えれば俺達のコールド勝ちだ。


(ストレート来い)


キャッチャーの瑛太の指示を見て投球体制を整える。が、その瞬間、再び頭に激痛が走った。だが、1度投球体制をとって…しまったら、もうやめる訳にはいかない。そして


「ストライク!バッターアウト!」


なんとか三振をとり、俺達は試合に勝った。
うちの野球部は驕りでもなんでもなく強い。だから、こうした練習試合も、結構人が集まって見に来てくれる。


そして必ず、咲は来てくれるんだ。試合の度に、ねーちゃんが作った弁当を持って見に来てくれる。


「悠斗!おめでとう!はい、お弁当」


「いつもサンキュ!」


「はいはい」


にっこり笑う咲の顔を見ていたら、別に頭の痛みなんてどこかへ飛んでいってしまった。


「じゃ、あたしは帰るから」


「おう、またな」


咲を見送り、弁当を片手に瑛太のところへ走った。


「今日もナイスキャッチだぜ、瑛太」


瑛太に後ろからそう告げると


「おう、でもお前、ラストの球おかしかったんじゃないか?」


瑛太は振り返り俺をどこか奇妙そうな顔で見た。


「いつものスピードののったストレートじゃなかった。どうしたんだ、悠斗らしくもない」


瑛太とはずっとバッテリーでやってきた。今更ごまかせないということらしい。


俺は、一瞬ためらってから口を開いた。
< 8 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop