こじれ男に花束を〜俺様女医のスパルタ恋愛塾〜
ナースは
俺を

上から下まで、ちらりと品定めするように
視線をよこし、
目があうと、きまづそうににこりと笑った。

しかし
聞こえる

この男と、美人女医、が?と。


「ヘェ〜〜そ、そうなんですか‥‥」

「でもね、なんだか遠い親戚?みたいなのに
なっちゃったみたい」

「へ??」

「んなっ!!!ちょっと‥!」

この人、まさか言うのか⁇

女医の美しい口元に二人の視線が行く。
俺は祈るように
言うな、言うなと願う


「私の弟がこの人の奥さんとっちゃったから」


言った‥。


ナースが息を呑む気配がした。



「あ、わ、私、次の方にお食事、も、持って行かなくちゃ!
あ、すみません、私前田と申します。
また伺いますねーー!」


前田というナースは
あとさずりで後退して消えた。



「なななななんで言う必要あるの!!」
そんな情報、入院にいる?!


「あら、これってつまり今僕はフリーです、
傷心の身ですってアピールよ。可愛いでしょ?前田さん」

「可愛いよ!確かに可愛いかった!
だけどあんな若い子が俺みたいな男相手にするわけでないじゃないか!」



「それって私に失礼よ。かりにも昔は貴方が好きだったから付き合っていたのに」


「そ、それは‥」


「性格と、顔と髪とお腹なんとかしたら、貴方もまだまだいけるわよ」

それって他人じゃないか。

「俺はもう女性はいいんだ‥こりごりだよ。
美形の男も嫌いだ」


「私だって、身内のしでかしたことだから
ちょっとは罪悪感があるのよ。
少し協力させて。あなたの人生の向上のために」

「いや君のせいじゃないよ」

「だから
お腹なんとかして。ダイエットして退院してね」


そうだ

この人に昔から口で勝てたことはなかった事を思い出した‥‥。


女医、高村藍は
美しいが
口は相当きつい女性なのだった。

足も痛いが心も痛い。

俺は早く退院できるように
体力をつけることを誓った。
< 9 / 10 >

この作品をシェア

pagetop