敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「あれ、佐伯さん、一人で外出?」

「はい。社長がどうしても甘いものが食べたいとおっしゃるので。それと神田さんにお伝えすることがあって、ちょうど伺うところでした」

「私に?」

「社長が神田さんをお呼びです。大切なお話だそうですのですぐに来てほしいとのことです」

「社長が……?」


実は社長とはあまり直接的な接点がなく、事務的な会話がほとんど。

私が立ち聞きしてしまった時に話したのが仕事以外での初めての会話で、先日の合コンの時まともに話したと言っていいと思う。

私に伝言をして、佐伯さんはそのままエレベーターに乗り込み行ってしまった。

すぐに、ということなのでとりあえずコーヒーは後回しにして社長室へ向かう。

中にいるであろう社長の見かけとはかけ離れた重厚なドアをノックすると「どうぞー」なんて軽々しい返事にガクッとするけど。

あの人はかなりキレると社長就任前から重役の皆さんが仰っていたし、私が知る限り最も素晴らしい人材である室長があの人の下についているのだから、社長は見かけ通りの人ではないのだろう。

ドアを開け、中へ入ると眩いばかりの陽の光に一瞬目が眩みそうになる。


「ごめんね、急に呼び出して」

「いえ、大丈夫です」

「ま、座って」


そう言って社長は執務机を離れ、応接ソファへ座るよう私を促す。
言われるがままに腰を下ろすと社長が私の向かいに座った。

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