敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
***

室長を癒してほしいと社長から頼まれ、いただいた地図を見ながらオフィスビルの建ち並ぶ通りを徒歩で数分。

こんなとこセレブしか住めないよ、と勝手に想像していた超高級マンションが室長のお宅だという。


「いいのかな……」


心の中ではおどおどしつつも平静を装いカードキーを操る。
一つめの入口を突破して広いエントランスをくぐればコンシェルジュが常駐しているのであろうロビーが現れた。

エレベーターホールは上品に微笑むコンシェルジュとおぼしき男性がいる受付の向こう側にあり、恐らくここで住人以外の人物は目視で振り分けられるのだろう。


「あの、こちらの21階にお住まいの藤堂さんのお宅へ伺うのですが……」


企業の受付とは勝手が違うせいか、まるで子供のお使いのような台詞を吐いてしまった自分が恥ずかしくて顔が熱い。

こんなことなら受付で何と伝えたらいいのか社長に聞くべきだったと激しく後悔した。


「恐れ入りますがお客様のお名前をお聞かせいただけますか?」

「私は神田と申します」

「神田様、でございますね。お話は伺っております。どうぞお進みくださいませ」

「え?話って誰から……」

「はい、つい先程、三原様からご連絡を頂いておりました」

「ああ……」


さすが社長、抜かりがない。
私がここで躓くであろうと見越していたという訳だ。

受付の後ろへ回り、私がエレベーターに乗り込むまでコンシェルジュの男性はしっかりと見送ってくださった。

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