敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
エレベーターが目的の階に近付くにつれ、私の緊張も徐々に高まっていく。
室長の具合はどうなんだろうという心配と、仲違いしたままの状態であること、社長の依頼とはいえ私が室長のお宅に来てしまっていいのか等、とにかく考えが一向にまとまらずさらに焦って緊張してしまう。
21階に着くと、スッとドアが開いて1歩を踏みだす。
広い通路を進むとすぐに段ボールが立て掛けられているのが目に入った。
「もしかして……ここ……?」
21階とは聞いたけど部屋番号は?と今頃気付く愚かな私。
たけど迷おうにもエレベーターを降りて確認できたのは、ドアの前に段ボールが放置されたこの一部屋だけ。
セレブなマンションなのに段ボールか……、と思ったのも束の間、ガタガタとドアの向こうから音がして。
「それでは失礼いたします」
開かれたドアから出てきたのは業者さんと思われる服装の男性。
そしてそのドアの向こうにチラッと見えたのはーー。
「あっ!ま、待って……!」
段ボールを片付け立ち去ろうとする業者さんを尻目に、私は慌てて閉まりかけるドアをがしっと掴み、足先をドアの隙間に捩じ込む。
「し、室長、お疲れ様です……!」
ドアの向こうにいたのは室長で、私の姿を確認した室長は特に驚いた様子もなく、無言でドアを閉めようとする。
「なんで閉めるんですか……!」
「……驚かすなよ。悪質なセールスかと思うだろ」
「だ、だってドアが閉まっちゃうと思って……」
「だからって足を突っ込むか?すごい体勢だったぞ」
そう言って、先程の私の無様な姿を笑う室長。
というか私が家に来たことにもう少しリアクションないんです?と聞きたいぐらい平然とした態度に勝手に落ち込む。