敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
そして一通り出尽くした時、心はすとんと落ち着いたけど病人相手に何を言ってるんだと、今度は室長の様子が俄然気になってきて、そろそろと目線を上げると思いっきり目が合ってしまい心臓が大袈裟にはねる。
きっと私のことを何言ってるんだこいつ、っていう顔で見てると思ってたのに、室長は口の端を上げて機嫌良さげに笑っていて。
「……図に乗るの?」
「そ、そうです」
「思い上がるんだ?」
「だ、だからそう言っ……て……!」
ふわっ、と身体が引き寄せられて室長の腕に包まれる。
室長の熱が高いことは服を隔てて伝わってくる体温が教えてくれた。
それに明らかに体調が悪いということも、頭のてっぺんから僅かに聞こえる吐息が息苦しそうなことでわかった。
「…………君、体温低いんじゃない?」
「……違いますよ。室長が熱すぎるんです」
「そうか?計ってないからわからないが……」
背中に回された手のひらさえもが熱くて、こんな肌寒い玄関先で抱き合ってたら治るものも治らないと思うのに。
抱き締められた心地よさを自分からは手放せなくて、せめて少しでも温まるようにと、室長の背中に手を回してぎゅっとしがみつく。
「……別に冷たくした訳じゃない」
「え?」
「そばにいたら風邪がうつる」
「……だから、あんな突き放したみたいな言い方したんですか?」
「ああ」
私に冷たくした理由を淡々と話す室長がなんだか不器用に思えてしまい、バリバリ仕事をこなす姿とはかけ離れていて可愛いとさえ思ってしまう。
「私なら大丈夫ですよ?」
「大丈夫とは言いきれないだろ」
「いえ!私、ホント昔から体だけは丈夫なんです。風邪は誰かにうつすと治るって言うじゃないですか。私は大丈夫なので安心してうつして下さい!」
私はそう言って室長の腕の中で顔を上げる。
私のことを気遣ってくれるのは嬉しいけれど、私は滅多に体調を崩さないし、これは自他ともに認めるところでもあるので自信があるのだ。