敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「まずいな……。瞼が熱く感じる。さすがにキツくなってきた……」
「大丈夫ですか……?体温計はどこに……」
「ない。必要な時がなかった」
「え、ないんですか……?」
どれぐらい熱があるのか確認したかったけど、体温計がないというなら仕方がない。
一瞬、躊躇したけど昨日と同様に室長のおでこにそっと手を置くと、昨日とは比べ物にならないほどに熱くなっていて。
「えっ、熱すぎませんか……?」
「……冷たいな。七海の手……」
不意に名前で呼ばれて胸が高鳴る。
室長は『君』と『七海』の使い分けが絶妙過ぎて、私の心臓は突然訪れる甘い襲撃に振り回されてしまう。
「……気持ちいいからしばらくこのままでも……?」
「は、はい……」
おでこに当てていた私の手に、室長の手が重ねられる。
私の手は冷たくて気持ちがいいと言われたのに、室長の熱と私が勝手にドキドキして上がった熱とであっという間にぬるくなっている気がする。
だけど室長は気持ちよさそうに目を閉じているので、私はゆっくりとしゃがみ、ベッドの脇で膝立ちになった。
こんなに近くで、私に気を許しているこの人を見る日がくるとは思ってなかった。
長い睫毛にすっと通った鼻筋、何度も私を翻弄した形の良い唇がそこにあり、いつの間にか見惚れている自分がいる。
さっき室長は私に惹かれてると言ってくれたけど、きっと私はそれ以上に室長に惹かれてる。
でなければこんなにも騒がしく胸の鼓動が速くなっている理由がつかない。