敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
今までの努力が認められたことを素直に喜ぶ彼女が可愛いと思ったし、それを俺が見ているとも知らず、誰にも見られていないと油断する隙があるところも可愛いと思ってしまった。
普段からこういう飾らない表情を見せたらいいのに、と思っていると、彼女はコホン、と小さく咳払いをしてまたいつもの余所行きの顔に戻ってしまった。
すました顔でこちらへやって来る彼女を見て、どうにも笑いが堪えられそうになかったが、そこはなんとか我慢して俺もいまエレベーターを降りたかのように歩き始める。
「あ、室長、お疲れ様です」
「お疲れ様。専務……に呼ばれていたのかな?」
「はい。先日の海外出張のお話を伺っていました」
「そう。……特に問題はない?」
「え……、問題……ですか?」
「ああ」
遠回しになってしまったが、専務の女癖が悪いのは周知の事実で、ほぼ専務の専属になっていた秘書が不倫の末に異動させられたのは記憶に新しい。
「特に問題はありませんが……。あ、もしかして……」
何か閃いたのか、彼女がはっとした表情を見せる。
その様子からすると俺の言わんとすることがわかったのだろう。