敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「大丈夫です。きっと私では力不足かと……」
「はは、そんなことはないと思うが。特に何もないのならいいんだ」
「お気遣いありがとうございます」
「いや、こちらこそ変に勘ぐってしまってすまない」
俺がこう言うと、彼女は気にしていないとでも言うようにすれ違い様に軽く会釈してエレベーターへと向かう。
彼女がエレベーターに乗り込むのを確認して、俺はふう、と一息ついた。
「……小動物だな。ウサギってところか……」
頭の中で再生される、ウサギが跳ね回るかのような可愛らしい振る舞いと、何事もなかったかのようにすました顔で俺の横を通り過ぎた彼女のギャップが俺の中ではかなりの高評価で、まずいと思いつつも笑いが込み上げてきて肩が震える。
「……ふっ……、まずいな。次会ったら絶対笑う……」
俺が知らないだけで、世の女性陣は皆ああいうギャップを持っているものなんだろうか。
とにかく俺には今日の出来事のインパクトがかなり大きくて、この日からしばらくの間彼女を見ると吹き出しそうになるのを堪える日々が続くことになった。