敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
そもそも彼女とは仕事以外での接点はないし、彼女のことは深く知らないままでいた方がいいだろうと思っていたから、こんな風に一人でいるのを見かけてもあえて話し掛けたりはしていなかったが。
「まだかかりそうですか?手伝いましょうか」
室長として、部下が残業しているのならこれぐらい話し掛けてもおかしくはない。
本来ならあまり首を突っ込まずに立ち去ればいいものを、残業を咎められたと勘違いしたような表情を浮かべる彼女を励ますような話題へ移行していく。
彼女の仕事ぶりについて、責任感が強いところがよいと俺の率直な感想を伝えると、あからさまにほっとした柔らかな表情に変わる彼女。
それを見て、最近は頑固でひねくれた重役を相手にすることも多かったせいか、俺の言葉一つでこんな風に安堵してくれるのだと、また明日から前向きにやっていけそうな、そんな活力をもらえた気がしていた。
そして彼女も俺について前の室長より仕事がしやすくなった等と言って褒めてくれたのだが、言葉を選び間違えたのか俺の無表情なところが皆に公平に思えてよいと伝えてきた。
無表情なのは百も承知の事実だし、俺は褒められて素直に嬉しかったが彼女は失言だったと思っているようで、訂正しようと必死に説明を繰り返す。
俺はそんな不器用な彼女を見てまたも可愛いと思ってしまい、これじゃダメだと冷静になるよう努めたが。
彼女は自分も自然な表情をするのが苦手だと伝えたかったのか、下手な作り笑いが原因でフラれたとまで話してきた。