敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
俺としては以前見かけた、本来彼女が持っている可愛らしく喜ぶ姿を知っていることもあり、フラれたと少し落ち込むようなそぶりを見せる彼女を励ましたくなった。
「私は神田さんの表情豊かなところに好感を持っていますよ」
「え……?」
「作り笑い、というのは相手に打ち解けていない場合や、緊張などが表情を固くさせるのだと、私は思います」
「室長……」
「あなたが振りまく自然体の表情は、私にとっては憧れですよ」
嘘偽りのない、俺が彼女に対して思っていることをそのまま伝えた。
こんな風に身内以外に思うままに気持ちを伝えたのはいつ以来だろう。もしかすると初めてかもしれないな。
これで彼女が笑ってくれるといい、と思っていた俺だったが彼女の表情は笑顔からはどんどん遠ざかり今にも泣き出しそうな勢いだ。
てっきり笑ってもらえると予想していた俺は、予想が外れ真逆の反応を見せる彼女を前に情けなくも狼狽えた。
だがきっとこの狼狽えぶりもこの無表情のせいで彼女には分からないのだ。女性が泣いていても平然としている冷徹な男と思われるに違いない。