敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~


薄く目を開けると、見慣れた天井がそこにある。
熱はだいぶ下がっているようだが、まだ身体は熱を孕んでいるようだ。


「……何で今思い出すんだ……」


ここにきて彼女との馴れ初めを思い出すとは、これも熱の影響なんだろうか。

そして今は一体何時なのかと、頭を動かそうとすると額に感じる違和感。


「……何だ……? 何か貼られてる……?」


そっと手で触れると、湿布のような感触がそこにあった。
表面が既に乾いていたそれを剥がして確認すると、いわゆる冷却シートと呼ばれるものだと思われた。


「……こんなのうちに無かったよな……」


日用品の中でも医療品の類いは取り揃っていなかったはずだ。
もっとも揃えようと思ったことがなかったから体温計さえないのだが。

だったらこの冷却シートは彼女が買ってきたものなのだろうか。

起き上がり足をベッドからおろしても、頭が重いように感じていた症状はなく、体のだるさもかなりマシになっている。

おそらく数時間はぐっすり寝たと思うのでそのおかげだろうか。
そのまま立ち上がり、リビングへ続くドアへ向かう。

ドアの向こうからは何の音も聞こえないが、彼女はまだいるだろうか。そう思いながらそっとドアを開いたが室内はしん、と静まり返っている。
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