敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
俺一人しかいないのならいつも通りなのだが、彼女がいるならこの静けさはおかしい。
「……なんだ、帰ったのか……」
ここまでがっかりするのかと思うほどに、彼女がいないことに落胆している自分に笑う。
窓の外では陽が傾き始めているらしく、カーテン越しに差し込む光が赤みがかっている。
帰ってしまったのなら仕方ない、と気を取り直して水でも飲もうと新しくなったウォーターサーバーへと向かうと、隣のソファに見慣れないバッグが置いてあった。
「……なんでここに……。あ……」
寝室のドアに背を向けるように配置されたソファの端に、彼女がいた。
眠るつもりはなかったのだろう。
座ったまま、クッションを抱き抱えるような体勢で、すうすうと微かな寝息をたてている。
俺の家のソファでうちのクッションを抱えて眠る彼女は明らかに俺の部屋の中で浮いている存在に見えた。
全体的に渋い色味で揃えた部屋に不似合いなほどに鮮やかな存在。