敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

他人の寝顔なんてまじまじと観察したことはなかったが、気持ち良さそうな寝顔を見ていると、なぜだかほっとする。


「で……、どうするのが正解か……」


起こすのは忍びないが、起こさずにいると後から起こしてほしかったと言われそうだ。

だがもう少しだけこのまま眺めていたくて、彼女の隣にゆっくりと腰を下ろす。

すると俺の重みでソファの均衡がやや崩れてしまったようで。


「……んん……、あ……? わっ! 室長……!」

「……なんだ、まだ寝てろよ」

「え?」

「なんでもない。もう起きるのか?」

「すみません!寝るつもりなんてなかったのに……。室長は大丈夫ですか? まだ熱いですか?」

「とりあえず今は下がってる気がする。体が楽だ。薬のおかげかな。ま、一時的に下がってるだけかもしれないけど」

「あ、計りますか?」


彼女がそう言うので、俺はてっきり手で計られるのだと思い少し身構えたが、彼女はテーブルの上に置いてあった細長いケースのようなものを手にする。


「体温計ないっておっしゃってたので、買ってきちゃいました。はい、どうぞ」

「……それは……どうもありがとう……」


はい、と手渡された体温計。
なんだろう、厚意で買ってきてくれたのに素直に喜べない。
もしかして手で計ってほしかったってことなのか?

子供か俺は。


「計らないんですか?」

「ああ。もう熱ないから」

「でも、一応計ってみたらどうです?」

「……ないからいい」

「えっ、でも……」

「わかった。計る」


なんなんだこのやり取りは。
そもそも俺はなぜ不機嫌になるんだ。
俺が俺らしくなくて俺に戸惑う。
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