敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
だから彼女と結婚したその先は、ほの暗い俺の人生をその明るさで補なってくれるのだろうと安易に想像でき、結婚観が変わりつつあった。
「他の誰かなんて見つかるはずないって思ってますよね?何でそんな聞き方するんですか……?」
そう言って恨めしそうな目をして俺を見上げる彼女は、また俺が見たことのない顔をしている。
少し不機嫌そうな、いや、不貞腐れてると言えばいいのか、そんな顔をしているがきっと本気で機嫌を損ねているわけではない。
「他に見つけようと思えば俺よりいい男なんていくらでもいる」
「お言葉ですが、そんなにいないと思いますよ? というかそんなこと思ってないですよね」
「はは、いるさ。顔と地位だけなら中々いないかもしれないが、俺は中身が腐ってる」
「……そんなことは……」
そう言ってひねくれた俺の発言に対抗する言葉が続かなくなった彼女を見て、俺は決心をする。
「お粥が出来上がるまで、俺のつまらない身の上話でも聞く?」
「え……」
「まあ聞いて気分がよくなる話でもないけどね」
「……いいんですか?」
「ああ。君には話しておかないとね。自分の夫になる奴の家庭事情は知りたいだろ?」
「っ……」
予想通り、『自分の夫』という言葉に敏感に反応して頬を染める彼女は可愛い。
きっと彼女となら大丈夫。感情の稀薄な俺を理解して寄り添ってくれるはずだ。
「何から話そうか……。そうだな、俺の、子供の頃の話から始めようか」