敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
暁斗は俺と似ても似つかないほどの人たらしだった。
表情に乏しい俺とは違い、目が眩むほどの笑顔には嫌悪を覚えた。
だが俺は知っている。
あいつの母親は俺の母に、実の妹に夫をとられた惨めな目に遭い、暁斗は幼いうちから留学して家から出され、家族の愛を知らない奴だと。
俺は、初めて自分よりも惨めだと思える奴に出会った気がした。
笑ってはいるが、腹の底では俺が羨ましくて仕方ないんだろう?
父は愛人である俺の母のところに寄りついていたから。
俺は父のいる生活を知っているから。
そう思うとこれまでの人生で培ってきたどす黒い妬みが浄化されるような気がして気分がよかった。
俺はひねくれているし底意地の悪い人間なのだと自覚した。次第にそんな自分自身が嫌悪の対象になっていった。
実際に親父の会社で一緒に仕事をしてみると暁斗はいい奴だった。
仕事以外の色々な話をするうちに、暁斗も俺と出会って、俺のことを自分より惨めな境遇にいると思っていることがわかった。
結局俺達は、お互いがお互いの境遇に対して同情しているという状況に陥っていたというわけだ。
いつの間にか、はじめは嫌っていたはずの暁斗は不思議と何でも話せる貴重な存在になっていた。
親父の人生、生き様を否定してやりたいと言う暁斗に俺は賛同し、いつしかそれが俺達の目標になっていった。
親父の興味は会社を大きくすることだけに注がれ、家族は二の次だった。
それに自分の行いのせいで妻と愛人である母がいがみ合い、母が実家から見放され孤立していることに関心すらなかった。
ただ、暁斗と俺という息子が出来たことには関心を寄せていたと思う。
父は、母が正妻、愛人だとかは関係なく、自分の優れた遺伝子が継承されていることに満足している様子だった。
俺達は決して親父のようにはならないと、会社も俺達のやり方で拡大していくし、もしも家庭を持つなら俺達みたいに不幸になる人間は出さないと、言葉にはしていないがお互いにそう思っている。