敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「じゃあ、次は遠慮なく甘えさせてもらうよ」
それでも自制しなければと、なけなしの理性を使い余裕ぶった返事をする。
今日はまるで子供のようならしくない自分を見せているので、最後ぐらいは締めようと思ってのことだ。
「ああ、エレベーター来たな。じゃ、気を付けて。絶対タクシー乗って……、っ……!」
ふわっと漂う彼女の香り。
唇に一瞬触れた柔らかな感触は彼女の唇か。
彼女が俺の胸元に手を付き、背伸びをして唇を掠めるような不意打ちのキスをした。
まさか彼女の方から別れ際にこんなキスを仕掛けてくるとは思ってもいなかった。
茫然とする俺は、相当マヌケな顔をしているに違いない。
「じ、じゃあ私帰ります……! ま、また明日、あ、具合が悪かったら休んでくださ……」
「待て」
「え……、わわっ……!」
仕掛けたのは自分のくせに照れて頬を染め、そそくさとエレベーターに乗り込もうとする彼女の手首を掴み、強引に引き寄せる。
「やってくれるよな。こっちは我慢してやってるのに」
「あ、あの」
「いいか、絶対うつるなよ?」
「ん……っ!」
完全にスイッチが入った。
風邪がうつるからと遠慮していたが、そんなことはもうどうでもいい。
彼女からのキスが、身体の奥底にしまいこんでいた劣情を解放するきっかけになってしまった。
もう唇だけじゃ足りない。全部ほしい。繋がりたい。
頭の中はそんな願望で飽和状態だ。