敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

連絡が来たのは今朝のこと。

急遽予定が変更となり、社長が行くはずだった会食に室長一人で臨むことになったそう。

そんなことあるんだ、なんてまだ覚めきらない頭でぼんやり考える私に、室長は「君にも来てほしい」と目の覚めるような台詞をはいた。


「ここだ。君は奥へどうぞ」

「あ、はい」


当然のごとく座席はグリーン車で、私のバッグを棚に載せ終わると室長は席へ座り、やれやれといった感じでふう、と一息ついていた。


「今日、暁斗が行けなくなって、先方に事情を説明したら俺だけでもいいから来いって言われて一人で行く予定だったんだ。でも暁斗がそれなら君を連れていけばいいって言い始めてさ」

「そうなんですか? あの、今日の会食のお相手は一体……」

「俺の親父の古い友人だよ。うちの家庭事情にも明るい人で、俺と暁斗が兄弟なのも知ってるぐらいなんだ」

「だから室長お一人でも、ってことなんですね」

「そういうこと」


そう言って室長はまた深くため息をつく。

ここ最近は外出も多くて、顔を見るのもままならなかったぐらいだったので忙しいんだろうとは思っていたけど。

その横顔はひどく疲れているように見え、聞きたいことはあるけれど今はそっとしておこうと思った。
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