敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

会長はさっきよりはだいぶ落ち着いたようにも見えるけれど、それでも息は荒く、私はゆっくりと背中を擦り続けたまま会長の額に浮かぶ汗をおしぼりで拭った。


「おじい様、立てますか?」


外と連絡を取っていた常務が戻られ会長へ声をかけると、会長は頷き、ゆっくりと立ちあがろうとしたけれど。

ほんの少しよろめいて、バランスを崩しそうになられたので、私は咄嗟に両手で会長の腕を支えた。

と、その時私の肘がテーブルの角に触れてしまったようで、グラスが倒れ、パシャっとスカートの上にお酒がこぼれてしまう。


「あ……」


淡いベージュのスカートに転々と染みが広がっていく。
けれど今はそんなことを気にしている場合ではない。


「会長、よければこのままお車までご一緒いたします」

「じゃがスカートが……」


お酒をこぼしたのは私のせいなのに申し訳なさそうにする会長。


「いいんです。これぐらい大丈夫ですよ」


体調が悪くなって帰られるのを気にされている会長が、これ以上肩を落とされないよう、私はにっこりと微笑み返した。

すると会長は腕を組むようにお体を支える私の手にご自分の手を重ねられ、「ありがとう」と仰って私と一緒に廊下へ出る。
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