敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~


会食のお料理はこれから出されるものがまだあるけれど、会長は帰られてしまったので、私たちも残らずにホテルに帰ることにした。


「声が少し掠れてるな、とは思ったんだがあの通り快活な方だからあそこまで調子が悪いとは思わなかったな」


帰りのタクシーの中で、室長がぽつりと呟く。


「そうですね……。お酒もすごく飲まれていたのでお元気なのかと思ってました」

「まあ年も年だからな。ただの風邪だから、で済まないこともあるし。また今度、お元気な時に来ようか」

「はい」


また今度、なんてこれからも私といるつもりなんだと思えて、こんな些細な言葉でさえも私を安心させる。


「そういや腹すいてないか? たいして食べてなかっただろ?」


宿泊先のホテルが近づき、はっと気づいたかのように室長がそう訊いてきた。


「そうですね……。食べたような食べてないような……。でもお腹はあまり減ってないかもです」


会食があんな形で終わり、バタバタしていたせいかまだ少し緊張が残っているような気がする。

しかもこのあとホテルに戻れば室長と二人きりなのだ。

それを思うとまた違う緊張が込み上げてきて、お腹がすく余裕すらなさそう。
< 209 / 282 >

この作品をシェア

pagetop