敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「そうか……。悪い、なんか俺、早く帰りたくて食事のこととか今の今まで頭になかった……」
苦笑いをしてばつの悪そうにそう話す室長。
なんで早く帰りたいんですか、と意地悪な質問をしようとした時、ちょうどタクシーがホテルに到着してしまった。
先に降りた私はひんやりした夜の空気を吸い込み、高ぶる胸を落ち着かせようと何度か深呼吸を繰り返す。
「どうする? まだ時間も早いしどこか食べに行こうか? あ、スカート着替えなきゃダメか」
「いえ、乾いてしまえば汚れはじっくり見ないとわからないと思うんですけど……。あまりお腹はすいてなくて……。なので室長が行かれるところについていきます」
室長こそあまり食べてないように見えたので、お腹はすいているはずだ。
「そうか……。俺は大丈夫だし君がそう言うなら……、後で適当にルームサービスでもとる?」
「あ、はい……。そ、そうしましょうか……」
ホテルのエントランスを抜け、室長のあとについてエレベーターへと向かう間も胸の鼓動はうるさいくらいに鳴り響く。
ズボンのポケットに片手を入れ、ただ立っているだけで絵になるほどに人目を引く存在に私の目も釘付けになってしまう。