敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
この先のことを考えるとこれまでにないぐらいの緊張がどっと押し寄せてきて、思わず手をぎゅっと握りしめてしまう。
部屋に着くと室長も私も、お互い無言でコートを脱ぎ始めた。
室長がスーツの上着を脱いで、しゅるっとネクタイを抜き取る音が聞こえると、変にドキドキして顔が熱くなる。
「ルームサービス、希望ある?」
「え……、あ、はい……」
差し出されたメニューを見ても全く頭に入ってこなかった。これが俗にいう「頭の中が真っ白」な状態なんだと思う。
それでも少しの間、黙ってメニューを見つめていると「ふっ」と笑って息を付くような声が頭上から降ってくる。
「そんなに緊張しなくていい。無理矢理取って食べたりしない。やっぱり今夜はもう一部屋とろうか」
「え……?」
室長は少し困ったように笑い、私の頭をぽんぽんと撫でるとフロントへ連絡するのか壁際におかれたテーブルへ向かい受話器を取った。
「ま、待って……!」
もう一部屋取ると言われた意味を理解するのに手間取ったけど、つまりは今日は何もしないということだ。
緊張のせいでガチガチな私を見て、気が進まないと思われたのだと思う。