敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「ち、違うんです! こ、これから、その……、室長と……一緒なんだって、思ったら緊張して……」


室長の無駄のない流れるような一連の行動を止めようと、受話器ごと両手で押さえ込み、必死で伝える。


「……本当に大丈夫か? 俺もかなり強引だったからもしまだ君がーーーー」

「だっ、大丈夫です! 私、嫌だなんて思ってません。むしろ……その……逆で……」


その逆で、早くあなたに触れてほしいと思ってる、とはさすがに言えなくて言葉につまる。


「さ、先にシャワー浴びてきていいですか……?」


いまの私が言える精一杯の台詞はこれだけだった。
だけど室長には意味は伝わるはず。
私が嫌がってなんていない、無理なんてしていないって。

きっと私の顔は真っ赤だと思う。
男の人とこういう状況になるのは初めてじゃないのに、今までの経験がゼロになったみたいに緊張している。

室長はそんな私を見てどう思っているのか、私に腕を掴まれたまま、真顔でじっと私を見つめ返しているけれど。


「……わかった。じゃあ俺はその間に適当に何か頼んでおくよ」


室長はそう言って受話器を置くと、優しく微笑んでそっと私のおでこに唇を寄せた。
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