敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
気分が高揚してお腹がすく間もないとは思うけど、心遣いに頷くと室長は満足そうに笑ってソファから立ち上がる。
そしてバスローブ姿のまま所在なさげにしている私にソファへ座るように促し、室長はバスルームへと向かう。
先程まで室長が座っていた場所へ腰を落とし、胸いっぱいで食べられそうもない品々に目を向けるふりをしながらこっそりと彼の背中を見つめていた。
広い背中、すらりと伸びた長身、バスローブを手に取るだけの所作さえ美しく、どこをどう見ても紳士と呼ぶのが正しいのに、私にキスする時はその舌先は凶暴で、触れる指先はしなやかな獣のようだったと思い返す。
そんなことを思い浮かべると、かあっとますます頬が熱くなってしまった。
「ーー七海」
低く、耳に染み込む艶めいた声で突然名前を呼ばれドキッとする。
そのままバスルームへ入るもの、と思っていたけれど室長は立ち止まって私を見ていた。
「バスローブ1枚で、ベッドの上で待ってて」
室長はそう言って無邪気とも言える笑みを浮かべる。
「え……、それはどういう……」
「すぐに上がるから。だからーーいいね? バスローブだけ、中には何も身に付けないように」
「えっ、で、でも」
一気に挙動不審になる私をよそに、室長は意地悪そうに「ふっ」と笑ってバスルームへ入ってしまった。
「ほ、本気なの……?」
あの意地悪な笑い方から見て、私をからかったのか、本当にそうしてほしいのか見当がつかない。
今、バスローブの中は上下を揃えた下着だけ。
これを脱いでバスローブだけでベッドにいろと?
「えー……。もし冗談だったら、やる気満々だと思われるよ……。どうしよ……」
この場にいないくせに、ここまで惑わせる室長は本当に質が悪い。
なのにそんな室長にますますドキドキと胸を高鳴らせて、従順に背中のホックを外す私は彼にどっぷりとハマっているに違いなかった。