敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「俺の予想では、君なら迷った挙げ句言う通りにしてくれるかなとは思ってたんだけど、まさか正座して待ってるとは思ってなくて」
室長は苦笑いを浮かべ申し訳なさそうに眉を下げてそう言うと、手にしていたお皿をサイドテーブルへ置き、一口大にカットされたメロンにフォークを入れる。
それからベッドへ腰掛けると、私の方へと目を向けた。
「ルームサービスでも食べながら待ってるかなとも思ったしね。……食べる?」
「は、はい……、いただきます……」
差し出されたフォークに戸惑いつつも「あーん」と口を開けば、甘い食感が訪れる。
「……あ、甘いですね……」
素直に感じた何てことない感想をこぼせば、室長はもう一度フォークを手に取る。
「そう? もう一つ食べる?」
「あっ、いえ、もう大丈夫です」
私が断ると、「そう」と言ってフォークを置き、意味ありげな視線を送ってくるけれど。
何も言わないし、ただ見つめられたままなのでどうしても居心地が悪くなり、私は視線を逸らしてしまう。
「……室長は、余裕そうですね」
目を合わせられないまま、ぼそっと呟く。
室長は経験豊富で、しかもお相手はきっと私なんか足元にも及ばないような美人ばっかり。
だから私とこうなった後にがっかりされるかもしれないと思うと変に緊張してしまい、私の方は全く余裕がない。
なのに室長ときたら、この状況で私をからかうぐらい余裕があるのだ。