敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「言おうかとも思ったけど、俺もそんな余裕なかったし。それに途中から上司と部下モノっぽいなとか思えてきてさ」
「な、なに言って……」
「そう思ったらかなりヤル気出たから、まあ結果よかったかなと」
そう言ってにんまりと笑う室長。
こんな笑い方もするんだなあと感心する場面じゃないけどそう思ってしまった。
「だって……薫さん……って呼びにくいんですもん……」
「じゃあこれからも『室長』って呼ばれるのか? もし室長じゃなくなったら何て呼ぶんだ?」
「え……?」
まるで猫でも可愛がるかのように、指で私の頬を撫でながら室長がそう訊いてきた。
室長じゃなくなる?
まあ異動という可能性も確かにあるとは思うけど。
「俺の役職で呼ぶならこの先コロコロ変わるかもしれないぞ。それなら名前で呼ぶのに慣れた方がいい」
「異動の話とかあるんですか?」
「……まあ、ないわけじゃないさ。公表してないが一応会長の息子だからな」
「そうなんですか……」
室長みたいに能力が高くて社長の信頼も厚いなら、室長で終わるわけはない。
でもそうなると、必然的にこれまでみたいに一緒に仕事することはないんだろうな。