敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
やっぱりいないと思いながら、カウンターにいる数名のお客さんにも目を向けると、ふと、奥に一人で座っている男性が目についた。
薄暗い明かりの中、ぼんやりとしか顔が見えないけれど全体的なフォルムが既にカッコいい。
目が肥えてしまったとはいえ、やっぱりイケメンは勝手に目に止まるものだなあ、とついついその姿を眺めているとその男性が、カウンターの中で私の様子をうかがっていた店員さんに声を掛け、顔がこちらの方に向けられて。
「っ!」
見覚えのある顔、聞き覚えのある声。
咄嗟に顔をそむけて回避したけど気付かれてしまっただろうか。
店員さんがその男性と話しているようなので、そっと顔を上げてゆっくりと確認するように目を向ける。
やはりそこにいたのは間違えるはずもない、社内イケメンランキング2位の我が上司、藤堂薫秘書室長だった。
「お客様?まだお見えになっていないのでしたらお席をご用意いたしましょうか」
「えっ、あ、はい……」
女性グループの接客をしていて戻ってきていたもう一人の店員さんに話し掛けられ、咄嗟に答えてしまったけど。
一体誰と待ち合わせてるっていうんだ私は。
さっさと出ていけばよかったと後悔しても既に遅く、店員さんは私を案内しようと準備中だ。