敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
*
シャワーを終え、バスルームから出ると室長はソファに座ったまま何やら神妙な顔をしていた。
お仕事で何か面倒ごとが起きたのかもと思い、声を掛けるのは憚られたので自分は自分の支度に専念しようと淡々と動いていたけど。
何だか視線を感じるなぁと思い室長へ目を向けると、すごく真剣な目で私のことをじっと見つめていることに気が付いた。
「あの、どうかしましたか?」
ただただじっと見つめられていることに耐え切れずこう訊くと、室長はどこか力なく笑って首を振る。
「……いや、何も」
「そうですか……。何か面倒なことが起きた感じですか?」
余計な詮索はしない方がいいかもとも思ったけど、何となく、今の私と室長の関係なら大丈夫かと思って訊いてみる。
「……面倒なことではないよ。まあ君にとっては『いいこと』じゃないの」
「え……?」
全く話が読めず、次の室長の言葉を待ったけど、それきり黙り込んでしまったので長い沈黙が流れていく。
「あの……室長?」
「……ああ、うん……。……さっきの電話さ、慎太郎くんからだったよ」
「えっ、常務ですか? もしかして会長の具合が……」
「いや違う。君のスーツを汚したお詫びに新しいのをプレゼントしたいからランチでもどうですかってさ」
「え……」
室長がこんな風に吐き捨てるみたいな話し方をするのを見たことがない。
もちろん常務からの申し出についても意外ではあったので驚いてはいるけど。
それよりも、室長がこんな態度なのはもしかしてヤキモチなのかも、と思えて嬉しさがこみ上げそうになるけど、勘違いだったら落ち込むので期待しないように理性を働かせる。