敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「で、姉たちからも藤堂さんが連れてくる女性を観察して来いって言われていたんです」
「か、観察……」
「気を悪くしてしまったらすみません。うちの姉たちは藤堂さんのことをずっと慕っていたので」
なんとなく、常務のお姉さんたちの姿がぼんやり見えるような。
気の強い美人さんたちで、きっと室長にグイグイ迫っていたんじゃないかな。
でも室長はなびかなかった……気がする。
まあこれは願望もあるけど、たぶん合ってる。
「ですが、あなたと会って話していたら観察なんて忘れていました。玉の輿狙ってたとか正直に言ってしまうし、笑い方も結構豪快というか」
「ご、豪快でしたか私……?」
「ええ。ただの秘書なら常に控えめに、自分を出したりはしないかなと。藤堂さんはあなたを秘書だと言いましたが、あの日は秘書として連れてきたのではないと僕は思いました」
紅茶のカップを置き、私をまっすぐに見つめる常務は一体何を言いたいのか、察しの悪い私にはわからなかったけれど。
「僕は昨日、あんな風に中途半端に会食が終わって残念に思っていました。あなたともっと話したかったから。すると、おじいさまがチャンスをくれたんです。お詫びを口実にしろ、と」
「え……?」
「おじいさまはあなたを気に入っていました。これは最近では珍しいことなんです。最近の子は素の自分を見せる隙を出さないから面白くないといつも言っているので」
「えーっと……それは私が隙だらけってことでしょうか……?」
私は思わず普通に湧いた疑問を口にしていた。
ただ、あの会長が私を気に入ってくださったことは単純に光栄なことだとは思った。