敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「ふ……、ええ、そうですね。隙だらけかもしれません。ですが男が付け入る隙というのは女性にはあった方がいいと思います。少なくとも僕はそういう女性が好きです」
口元を緩めて穏やかに笑う表情は、さっきまでの清廉な印象とは違い、どこか艶めいた、そんな感じがする。
「だから僕は今朝、藤堂さんに電話したとき率直に訊きました。神田さんと付き合っていますか、と」
「えっ」
予想外の展開に、正直動揺が半端ない。
室長の様子からはそんなこと聞かれたようには思えなかった。
それに、一体なんて答えたんだろう。
「藤堂さんは『付き合っていない』とおっしゃいました」
「っ……」
こんな反応、絶対変なのに、室長が私とは付き合っていないと言ったことが内心かなりショックだ。
でも、まさか付き合ってますとも言えるものでもないのか。そう考えると少し励まされた。
「それなら、と今日お誘いしたんです。すみません、こんな話をしてしまって。あなたは藤堂さんが好きなのですからショックを受けますよね」
「え……」
今度は一瞬、ホントに頭の中が真っ白になった。
何で気づかれたんだろう。
私が室長を好きだというのは周りから見てそんなにバレバレなのか。
それにやっぱりこの人はただ者じゃないということも確信してしまった。
「はは、すみません、不躾ですよね。あなたと藤堂さんのやり取りを見ていると恐らくそうだと思ったので。それに、僕も今の段階であなたを一途に愛してるとは言えません。どちらかと言えば興味があるという方が大きい」
そう言って私を見据えるように、まっすぐに向けられる眼差しには力強い優しさが含まれていて、なぜか目が離せなくなる。