敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

それから社長は様子を窺うようにチラチラと室長の方へ何度か目を向けるけど、室長は無反応だし、そもそもこちらを見てないしで、諦めたのかふうっと小さく息をついた。


「俺からの話、というのはね……。まあ、単刀直入に言うと、神田さんへお見合いの話が来ているんだけど……。受けるかどうかの答えが聞きたくて」

「え?」


全く予想外の話に、変に上擦った声が出る。
あれ、私の聞き違いかな。
お見合い、って聞こえた気がしたけど。
社長は私と室長の関係は知っているはず。
だって室長が風邪を引いたとき、家に行ってきてと頼んできたのは社長だし。

というかお見合いって……、まさかとは思うけど相手はもしかして。


「あ、何となく思い当たった感じ? 多分合ってると思うんだけど、相手は大央製鋼の大川慎太郎くんだよ」


社長は微妙な笑顔でお相手である常務のお名前をおっしゃるけれど、私としては何でそんな話に? という疑問しか浮かばない。

もちろん昨日ランチをご一緒して、そのあとスーツを選びに行った時、軽く興味を持たれたという自覚はあるけど。

それに帰り際に連絡先を聞かれ、断れない雰囲気を作り出されてしまいあっさりと連絡先の交換までしてしまっていた。

というか常務は草食の仮面を被った肉食に違いない。そうとしか思えない。
しかも頭脳派というのか、気付いた時には思い通りに動かされている、そんな人だ。


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