敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「まあ昨日の今日で、すぐに返事ほしいって言うのは無理だと思うんだけどさ。会長がせっかちな上に、神田さんのこと気に入っちゃっててね。中々返事を延ばすのも難しいっていうか」

「あ、あの……お見合いといっても私は……」


ちらっと横目で室長の様子を伺いながら私が言いよどむと、社長も室長の方へ目を向けて眉間にしわをよせ、困ったような表情を浮かべていた。


「そうだよね、おかしいよね、俺の言ってること。でもまさかの正式な申し出で、会長も慎ちゃんもーー、あ、慎太郎くんのことだけど、彼もかなり本気らしいんだよ」

「ですが、昨日お昼をご一緒して少し話しただけですし、急にお見合いと言われてもなぜ私なのかとしか思えません」

「うーん、その辺は俺も急すぎるよと思ったけど、ホント会長はせっかちだし、自分の人を見る目に絶対の自信を持ってて、まあ君がその目に適ってしまったってことなのかなぁ」


遠くを見るような目でため息混じりにそう話す社長は、このお見合い話に賛成のようには見えなかったので少しほっとした。

でも、肝心の室長は我関せず、とでも言うように一向に私たちの会話に入ってこないし、入る気もないのか全くこちらを見ようともしない。


「……ていうか薫、俺、もう帰っていい?」

「……ダメだろ」

「何でダメなんだよ。ホントはこんな話お前がするべきなのに何で俺に言わせんの」

「何でって、会長がお前に言ってきたからだろ」

「そうだけど! そうだけどさ……。こんなのおかしいって」


そう言って社長は私と室長へ交互に目を向けながらため息をつく。


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