敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「……俺からの話はこれで終わりだ。俺はまだ仕事が残ってるから戻る。君も早く帰りなさい」
最後に上司としての声かけをすると、室長はすっと立ち上がり社長室から出て行く。
けれど、私は室長を止めることも、自分の気持ちを伝えることも出来なくなっていた。
そんな気力さえも奪うほど、室長からの言葉は私を打ちのめしていたから。
相性が、よくなかった。
頭のどこかではそんな心配をしていたこともあった。だからそれはいい。
でも『私じゃなくてもいい』というのは辛かった。
「っ……、う……」
室長が優しかったから。
目を細めて微笑むあの姿に嘘はないと思ったから。
室長を満足させられた自信なんかなかったけど、心はきっと満たせてる、そう思ってた。
全部、私の独りよがりの自己満足だったなんて。
「ふ……、っ……」
我慢しようと思っても、溢れ落ちる涙は止まらない。
心のどこかではこんなこともあるかもと、ついこの前までは覚悟していたのに。
あの夜を過ごした今となっては、私は心ごと全部を室長に捧げてしまっていたのだと気付いた。