敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~



『本当に申し訳ありません!』

「いえ、大丈夫です。少し驚きはしましたけど……」


室長から見放され、ショックで茫然自失となっていたのに、どうやって帰ってきたのか自宅のマンション前まで来たとき、常務からの電話が入った。


『つい先程おじい様から、お見合いを申し込んだと言われて、久々に慌てたというか、変な汗をかきました……』

「そうなんですか。常務はご存じなかったんですね」

『もちろんです! いや、昨日おじい様から色々と聞かれた時に、とても楽しかった、と報告はしたんですが、まさかお見合いを申し込むとは思いもよらず……』


お見合いの経緯についてはどうやら常務が知らないところで会長が勝手に進めていたらしい。

常務は開口一番申し訳ないとおっしゃり、まるで電話の向こうで頭を下げているのが見えるかのように、その声からは謝罪の気持ちが伝わってきた。


『ですので、お見合いの件は忘れてください。おじい様は通さず、僕は一個人としてあなたに向き合いたいと思っていますので』

「ですが、社長からは返事を急いでいると伺っておりまして、これについて常務の方から会長へお話ししてくださるということでしょうか……」


もしも常務が会長へお話ししてくださるのなら、私も気が楽になる。

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