敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
断ってもいいのかどうか悩むのは必然だったし、何よりこの件について社長や室長ともう話したくないというのが本当のところだ。
『おじい様へ話はつけますが……。神田さんはどうお返事されるおつもりだったんでしょうか……』
「え……」
『僕としてはよい返事であると嬉しいんですが。まあそうもいかないですかね』
そう言って常務は、ははっと軽く笑っているけれど。
大企業の常務、しかもゆくゆくは社長にもなるかもしれない人と自分が望まれてお見合いするだなんて身分違いにも程があると思う。
「あの、やはり私では常務のお役には立てないと思うのですが……」
このままだと昨日のように常務の手の上で転がされてしまうと思い、それとなくお断りの意思を見せてみる。
「私の家は父はおりませんが、母と二人、平凡な生活を送っているようなごく普通の家庭なので、釣り合いが取れないと思います」
昨日のように目の前に常務がいると言いづらいけれど、こうして電話を通してであればそれほど言いづらくはない。
でも、電話の向こうの常務からの返事はなく、気を悪くしたのかと気になり始めたその時。