敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「あの、そこじゃないって……じゃあ何が意外だったんでしょう」

「……七海ちゃんは室長と付き合ってるのかと思ってたから」

「えっ!」


パウダールームの外にも絶対に聞こえたと思うぐらい大きな声が出てしまった。
まあこの階にいるのは限られた人間だけだし、ランチタイムの今は私たちしかいないので大丈夫だけれど。


「ごめんなさいね。もし付き合ってないなら、鉄仮面が七海ちゃんを一方的に想ってるのね、きっと」

「え、いや、あ、阿川さん……」

「付き合ってないの?」

「えっと……ですね……」


しどろもどろを今まさに体感している。
何と答えればいいのか、阿川さんを納得させられるような言い訳が一文字も浮かばない。


「いいのよ、無理しないで。言えないことぐらいあるわ」

「い、いえ……。その……付き合っては……いませんが……」

「じゃあ無理矢理迫られてるの? もしかして困ってる?」


相変わらずの美しい顔に怪訝な表情を浮かべ、私の心配をする阿川さんは、もしも私が困ってると言おうものなら室長に直談判するのではないか。

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