敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「お前はずるいね。悪いけど俺は悪人にはなりたくないよ。ね、神田さん」
「は、はい……?」
「薫、お前に任せる。でも彼女は優秀なんだろ?他の重役からも話を聞くぐらいだからな。よく考えて判断してほしい。俺からはこれだけ」
社長は室長に向かってこう話し、執務室を後にした。
口調はいつもと変わらないけれど、若いのにどこか威厳を感じるのはやっぱり社長のカリスマ性っていうものなんだろうか。
そして残されたのは私と室長の二人だけ。
一体私はどうなるんだろう。
室長と社長が兄弟だなんて聞いたことがない。
つまりは公にしていないことなのだ。
私はそれを知ってしまったんだ。
『好奇心は身を滅ぼす』
室長の言葉が頭の中をぐるぐると巡っている。
本当にそうだ。
室長の他に誰かいるとわかった時点で近付くべきじゃなかった。
なのに先日のキスを目撃した時から室長に興味を持ってしまったせいで、いけないとわかっていながら止められなかった。
完全に悪いのは私、なんだけど。