敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「し、室長、私、お二人がご兄弟だということは誰にも話しません。わ、私は秘書のお仕事がす、好きで……ず、ずっと頑張って……」


懸命に自分の思いを伝えようとするけれど、出てくる言葉はまとまりがなく、何を言いたいのかさっぱり分からないと自分でもわかるほどに幼稚なものばかり。

これじゃ伝わらない、異動になる、もしかしてクビ?
そう思うと怖くて声が震えてしまい、いよいよ弁解の言葉も尽きかけた時。


「ーーーーもういい。落ち着け」


室長は穏やかな声音でこう言うと、私の頭をぽんぽん、と優しく撫でる。

まさかそんなことをされるとは夢にも思っていなくて、驚いて俯いていた顔を上げると、先程まで感じていた威圧的な雰囲気は消え、少し困っているような、そんな表情を浮かべた室長がいた。


「ーー場所を変えよう。少し、話したい」


そう言って室長はスーツの上着に袖を通し、帰り支度を済ますと無言のまま、目だけで私について来るように促す。

私はそれに逆らう術もなく、室長の後について執務室を出た。
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