敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
今私達が座っているのはカウンター席で、先日室長がいた席と同じ場所。
そして私が座っているのはその隣なんだけど、室長を逆ナンした女性が来た席になる。
そのせいなのか、こうして並んで座っているとどうやっても先日のキスシーンが思い出されて勝手にドキドキしてしまう。
「失礼します。こちらをどうぞ」
「え……、あ、この前の……」
緊張しすぎて周りの状況が把握出来ていない私の前に、スッと差し出されたグラス。
先日と同様に淡いグリーンが細かな泡に映えて美しく輝いている。
「悪い、勝手に頼んだ」
「いえ……、この前いただいた時もとても美味しかったので嬉しいです」
甘く爽やかな口当たりが凄く気に入って、何ていうカクテルなんだろうと気になっていた。
「でも、これを飲んでたことをご存じということは、あの時私がいると早い段階で気付いてらしたんですか?」
「ああ。君、目立ってたから」
「え、何かおかしかったですか?」
「いやおかしくはなかったよ。でも迷子が来ちゃいました、って感じだった」
「ま、迷子……?」
「知らないだろうけどこの店一見の客はお断りなんだ。常連の付き添いがないと入れない」
「え……、そうなんですか?」
あの時、店を間違えたことにはすぐに気付いたけど、間違えたと言えずに、待ち合わせてるという変な演技をした私。
そんな私に店員さんは普通に待ち合わせかどうか聞いてくるぐらいだから大根演技でもなかったはず、と思っていたけど。
いかにも一見の客である私が断られなかったということは。