俺がきみの一番になる。
それなのにも関わらず、本田君のお目当てのバスはなかなかやってこない。待つこと数十分、ようやくバスが来たときにはじっとりと汗をかいていた。
どこに連れてくつもりだろう。
バスに乗り込み、二人掛けの席に座る。中は冷房が効いていて、とても涼しい。お客さんはそこまで多いわけじゃないけど、座席がちらほら埋まるくらいにはいる。
駅を抜けると、バスは思わぬ方向へ走り出した。
ガタガタと大きく左右に揺れるバス。さらには道も細く狭く、険しくなってきた。多少の土地勘はこの一年で身についたけど、こんな山道は初めてだからどこに向かっているのか見当がつかない。
「どこに行くの?」
「まぁまぁ、焦るなって」
「気になるから聞いてるんだけど」
「柳内さんって、案外待てないタイプなんだな」
クスッと笑われてムッとする。
「だって……気になるんだもん」
そう言ったけど、本田君は笑っているだけだった。
バスが終点に着いたのは、それから三十分ほど経ってからだった。
本田君が立ち上がり、お客さんは私たち以外にはもう誰もいない。
標高が高く見渡す限り山しか見えなくて、こんなに自然に触れあえる場所がこの町にあったなんて驚きだ。
しばらく山道を歩いて坂を登ると、道路の幅が一部広くなっている場所に出た。バイク用の駐輪場と、車が何台か停められるスペースがあり、そこにはベンチが置いてあって、休憩ができるようになっている。
「わー、すごいっ」
視界に広がるのは山ばかりだけど、ここからだけは町の景色が見下ろせるようになっていて。さっきまでバスで走っていた道や、山のふもとにある家が小さく覗いている。