俺がきみの一番になる。

こんな時、どう言えばいいのかな。

どう言うのが正解なのかな。

わからないよ。

「また困ったような顔してる」

眉を下げてさみしげに笑う本田君は、一歩ずつ私に近づいてきて目の前に立った。

オレンジ色の夕陽を背にしている本田君は、なぜだかすごくカッコよく見える。

ドキドキと高鳴る鼓動。本田君以外、なにも見えない。

「俺はまだ、柳内さんの一番にはなれない?」

その言葉に胸の奥がキュッと縮んだ。本田君がそばにいると、心が乱される。普通じゃいられなくなる。翻弄される。振り回されたくないのに、冷静でいたいのに。そうさせてくれない。

「な、なに言ってんの。亜子は」

もう誰も好きになりたくない。誰かを好きになって、傷つくのはごめんだ。浮気されて裏切られて、毎日のように泣いてすごした日々。別れてからも、すごくツラかった。好き……だったから。誰かを好きになって、もう二度とあんなツラい思いはしたくないんだよ。

それにね、本田君の気持ちがずっと私にあるとは限らない。太陽の時がそうだったように、友達でいたほうがよかったって思われるかもしれない。

そうなったら、また傷つくことになる。

一度そんな経験をしてしまったから、誰かを好きになることが、とてつもなく怖い。だから、今のままが一番いい。

ずっと、このままじゃダメなの?

本田君とは、友達のままがいいよ。そしたら、傷つくこともないでしょ?笑っていられるでしょ?

「本田君は一番だよ? 亜子の男友達として」

ごめんね。

そんなふうにしか言えなくて。
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