俺がきみの一番になる。

「いやいや、ここまできといてそれはないだろ。草太だって、亜子ちゃんに会いたいはずだしさ」

「うっ」

半ば強引に連れられてエレベーターに乗り、向かった先は最上階だった。エレベーターが開いた瞬間、ここはホテルだったかなと思うような空間が広がっている。

絨毯の床に、さらにはロビーらしき広いところにはソファーとテーブル、そしてシャンデリアまで。部屋の中だと勘違いしてしまいそうなほどの高級感あふれる空間。すべてがキラキラと輝いていて、とてもまぶしい。

思わずキョロキョロしながら歩いていると、この最上階には部屋が一つしかないらしいことに気づく。

「ちなみに、このすぐ下の階が俺んちなんだ」

「ええっ?」

私はさらに目を見開いた。なんだか今日は色んなことに驚かされる日だな。

「うちなんて、普通に賃貸マンションだよ。あ、もしかしたら、そこも本田君のおじいちゃんおばあちゃんの物件かも」

この近くだし、ありうるよね。そう考えたら、世間ってすごく狭い。

高木君がインターホンを押すのを、後ろに隠れて見つめていた。すごく気後れしてしまい、ハラハラしながら反応を待つ。

インターホンからはお母さんらしき人の明るい声がして、ガチャリと玄関の鍵が開いたのがわかった。

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