俺がきみの一番になる。
本田君の部屋は玄関を入って右に進んだところにある突き当たりのドア。リビングは左側にあって、なんだか騒がしかった。
うちも何年か前まではこんな風に騒がしかったっけ。家の中に笑い声が響いて、なにかしらの音がしている。家に誰かがいてくれてると思うと、部屋に一人でいてもさみしくなかった。
でも今はこの生活音がとても懐かしくて恋しい。なんだか、胸の奥のほうが小さくギュッと締めつけられた。
お姉ちゃんに会いたい。
お母さんに……会いたい。
なんて、しみじみしてみたり。
本田君の部屋は至ってシンプルで、勉強机のほかにベッドとローテーブル、テレビ、本棚、野球ボールにグローブとバットが置いてあるだけだった。部屋はサッパリしてるのに、勉強机の上は物がごちゃごちゃしていて散らかっている。
それにしても、広い。私の部屋の倍はあるんじゃないかな。
落ち着く先がわからずにボーッと立ち尽くしていると──。
「自由にくつろいでいいよ」
高木君がまるで自分の部屋であるかのようにそんなことを言うから、思わず笑ってしまう。
その高木君はベッドを背もたれにして早速漫画を読み始めている。
私は少し迷いながら、勉強机の前の椅子に腰かける。そして、散らかっている勉強机の上をぼんやり見つめていた。