俺がきみの一番になる。
同じクラスなのに別々に教室に行くのもどうかと思い、流れ的に本田君と並んで歩いた。二年生の教室は校舎の二階にあって、階段を上がって廊下の突き当たりが一組で私たちのクラスだ。
「柳内さんってスマホ持ってる?」
「もちろんだよ」
「あとで番号教えてよ」
「え?」
「あ、えっと。ほら、もしなにかあったとき、連絡先を知ってたほうがなにかと都合がいいこともあるだろ?」
そういうもん?
「うん、いいよ」
そんな他愛ない会話をしながら歩く。
朝の始業前ということで、どの教室もガヤガヤと活気づいていた。
四組から一組まで順に並んだ教室。階段を挟んで反対側に五組から八組の教室がある。
三組の教室の前を通った時、後ろのドアが突然開いて中から人が出てきた。
「わっ」
ぶつかってしまい、ビックリして思わず声が出た。私の小さい身体は簡単に後ろへよろける。
だけど本田君が支えてくれたから、なんとか転ばずにすんだ。
「あ、悪い」
その声を聞いた瞬間、心臓が大きく飛び跳ねた。恐る恐る顔を上げて、そこにいた人と目が合いドキリとする。
なんで……よりによって。
派手な茶髪に制服をゆるく着崩した目の前の男子の名前は、三上 太陽(みかみ たいよう)。私の元彼だ。
目が合うだけで、私の意識の全部を持っていかれる。